小善は大悪に似たり

小善とは社員を甘やかす事で、社員が甘えて会社全体を不幸にする大悪の元となる。社員を大事にするとは、叱るべき時には心を鬼にして叱る事が大善である。アメリカの会社でありながら、IBMの社是には「社員を大事にする」というものがある。
「野鴨の精神」や「野鴨たれ!」という話が伝統的IBM DNAとして語り継がれている。
デンマーク、キェルケゴール著の話が原典だ。
ある善良な心優しい老人が、デンマークにあるジーランドという湖で野鴨に「えさ」を与えていた野鴨は、初めのころは季節ごとに他の「えさ場」へと旅立っていたのだがその湖が居心地もよく、しかも「えさ」に困らなかったので、しばらくするとすっかり居ついてしまった。ある日、その老人が亡くなった
野鴨は次の「えさ場」を探そうとするが、
湖に居ついていた間に飛ぶことや駆けることを忘れてしまい、もはや他の「えさ場」を探すことができない。さらに悪いことに、
近くの山から大量の雪解け水が湖に流れ込んできた他の鳥がすばやく飛び立つ中、
太った野鴨は飛ぶことや駆けることができずに死んでしまった
野鴨は、本来数千キロを飛ぶことのできるたくましい鳥である
そのたくましい鳥でも、環境に安住することにより本来の生命力を失い、
ちょっとした環境の変化にも対応できなくなってしまったのである
というものである。
この話に感銘を受けた、本国IBM二代目社長であった
トーマス・J・ワトソン・ジュニアは、さらに次のような言葉を残している。
「ビジネスには、野鴨が必要なのである。
そしてIBMでは、決して野鴨を馴らそうとはしない」
IBMerにとって重要なことは、馴らされるのではなく、
自主性を持ちながら、目標を持って行動することということだ。
そういうたくましい鴨を育てるという意味で
「社員を大事にする」とIBMはいっているのである。
それは、まさに
「小善は大悪に似たり」
ということではないだろうか?