5・効果的に伝える行動パターン分類を活用する

 これまでお会いした多くの経営者は「うちの社員は、どうしてオレの言う事を分からないんだろう?」と悩んでいます。
その一方で、
「あいつ(=ある特定の社員)は、オレが言う前に察して動けるんだよ。」と言います。
確かに、その社員はあなたの意思を推し量るコミュニケーションスキルが秀でているのでしょう。
しかし、その社員があなたの意思を推し量れるのはコミュニケーションスキルが優れている理由だけではありません。
あなたと部下が同じ絵を同じように見る事が出来ているからです。
前述の老婆の例のように、あなたとその社員だけが老婆の絵を見ているのかもしれません。
もう一つの理由として
あなたと行動パターンが似ているのかも知れません。
行動パターンとは、聞きなれない言葉でしょう。
本項では、人の行動パターンを知り、その人の行動パターンに応じたコミュニケーションの方法を活用して人を動かす事をお伝えします。

  パターンに分けると言うと、日本では血液型分類が多く使われます。
一般的には、A型は神経質、O型は大雑把、B型は自己中、AB型はマイペースのように分類しています。
この分類方法は科学的根拠が無いため、実際の仕事の場面では使えません。
1968年アメリカの社会学者デビッド・メリルとロジャー・リードが、対象者の言動の表れ方で人間の社会的特性を分類しました。以後、人間関係を科学的に捉えるツールとして多くの企業や組織で活用されているのがこの行動パターンによる分類方です。人間の行動パターンは4つのソーシャルスタイルに分けられます。
元々はアメリカ海軍が潜水艦の乗組員同士の円滑なコミュニケーションを図るため考案されたモデルです。
似たタイプは人間関係のトラブルが少なく、敵対するタイプはトラブルの発生確率が高いと言われています。何カ月も同じ艦内で生活を共にする乗組員同士のタイプをバランス良く配置することで帰還率が高まったとも言われています。
この行動パターン分類では、
自己主張が強いかそうでないか。の思考開放度の軸と
感情表現が豊かかそうでないか。の感情開放度の軸の2軸で4つのパターンに分類します。

ソーシャルスタイル

左上のドライバータイプの特徴は
・感情は出さないが、メリハリがあり力強い話し方をする
・しっかり目を合わせて話す
・短めの文章で、結論からはっきりと断定的に話す
・決断が速い
・大筋をつかんだら、より短時間に結果を出そうとどんどん進めていく
・人間関係より、仕事、課題を重視する
戦国武将では織田信長のイメージです。
ワンマン社長と言われる経営者はこのタイプが多いです。
人に対しても、結論から話す事を求めます。
話が長い事を嫌います。

左下のアナリティカルタイプの特徴は
 ・感情を出さないで、穏やかな声で淡々と話す
 ・論理的で、順序立てた話し方をする
 ・冷静でビジネスライクな印象
 ・慎重で細かなことも見落とさない
 ・人間関係より、仕事、課題を重視する
戦国武将では明智光秀のイメージです。
私の部下にもこのタイプがいました。理系出身で研究者肌でした。
皆の前で自分の意見を言わないのですが、こちらから聴くようにすると、思いもよらない方法を提案してくれました。

右上のエクスプレッシブタイプの特徴は
・言葉・声・態度などすべてを使い、豊かに主張し、感情を表現する
・しっかりと視線をとらえ、感情を込めてアップテンポで話す
・まわりを巻き込みその気にさせ、楽しませる話し方
・直感的に決断するので、即決即断
・まずは強い人間関係を築くことにエネルギーをかける
戦国武将では豊臣秀吉のイメージです。
起業家に多いように思われます。
私はこのタイプです。

右下のエミアブルタイプの特徴は
 ・声にも態度にも、穏やかに感情をにじませる
 ・皆に目配りをしながら、同意を得るように、ゆっくり話す
 ・問い掛けるように、相談を持ちかけるように話す
 ・皆を励まし、サポートすることが得意
 ・仕事、課題に取りかかる前に、まずは、人間関係を築く
戦国武将では徳川家康のイメージです。
昔の日本のおかあさんタイプですね。
細々と色んなことに気配り、目配りします。