大将の戒め
徳川 家康
大将というものは
敬われているようでその実家来に
絶えず落ち度を探られているものだ
恐れられているようで侮られ
親しまれているようで疎んじられ
好かれているようで憎まれているものじゃ
大将というものは
絶えず勉強せねばならぬし
礼儀もわきまえねばならね
よい家来を持とうと思うなら
わが食を減らしても
家来にひもじい思いをさせてはならぬ
自分ひとりでは何も出きぬ
これが三十二年間つくづく
思い知らされた家康が経験ぞ
家来というものは
禄でつないでならず、機嫌をとってはならず、
遠ざけてはならず、近づけてはならず、
怒らせてはならず、油断させてはならぬものだ
「ではどうすればよいので」
家来は惚れさせねばならぬものよ
理想は「惚れさせる」ことであるが、
現実問題としては難しいこともあるだろう。本章では、どうすれば部下の人心を掌握し動かせるかを解説する。”